長年トラックを運転していると、
「危ないと分かっていても、つい…」という運転をしてしまうことがあります。
たとえば車間距離。
危険なのは理解しているのに、
減速したくない、流れを止めたくない、割り込まれたくない——
そんな気持ちから、つい車間が詰まり気味になることがあります。
ほかにも、
ギリギリをスピードを落とさず通過したり、
車線変更のときに少し近い距離に入ってしまったり。
「これなら通れる」「見えているから大丈夫」
そう思ってしまうのは、
慣れているからこそ、経験があるからこそ。
でもそれが、一番怖いところです。
この記事では、トラック運転手が無意識のうちにやってしまいがちな行動を、
「なぜそうなるのか」という理由と一緒に振り返ります。
誰かを責める話ではありません。
自分自身への戒めとして、思い出すきっかけになれば
それで十分だと思っています
車間距離が、詰まりがち…

車間距離が安全運転の基本なのは、誰もが分かっています。
教習所でも講習でも、何度も言われてきたこと。
それでも実際の運転では、気づくと車間が少し詰まっている——
そんな場面、少なくないと思います。
理由は複雑ではありません。
「減速したくない」「割り込まれたくない」
こんな気持ちが正直なところです。
トラックは一度スピードを落とすと、元の速度に戻すのに時間がかかります。
その間にスッと割り込まれると、ちょっとしたことでもストレスになります。
トラック運転手は意外と周囲の動きをよく見ているため、
「この車、割り込んできそうだな」と分かるからこそ、少し詰めて走ってしまう。
危険なのは分かっていても、つい“割り込まれないように”としてしまうんです。
それと車高の高いトラックは、2〜3台前の流れを見ながら走っています。
そのため、目の前の車との距離より、その先の車間を意識しがち——
先の車間が空いているのを見ると、
「前の車、もう少し詰めてくれないかな…」と感じ、
いつのまにか自分の車間が狭まっていく。
決して煽っているわけでも、危険な運転をしているつもりもない。
ただ、流れを維持したい、それだけなんです。
慣れが生む“無意識”、危険を危険だと感じないのが一番怖い。
車間距離は、意識しないとすぐに感情が出てしまう。
だからこそ、いちばん注意すべき事だと思います。
合流で、スピードを落とさない

合流の場面は状況によってさまざまですが、
無意識の運転が出やすいと感じるシーンのひとつです。
トラック側としては、合流のためのスペースはしっかり空けている。
だから本音を言えば、
「早く加速して、早く行ってくれ」と思ってしまいます。
ここにも、車間距離と同じ理由があります。
トラックは一度スピードを落とすと、元の速度に戻るまで時間がかかる。
オートマ車では思うようにシフト操作ができず、
低回転のままじわじわ加速することもあります。
できれば流れに乗った速度のまま走りたい——それが正直なところです。
一方で、合流してくる車は恐怖を感じやすく、
スピードを上げられずに結果的に両方の車両がさらに減速してしまうこともあります。
トラック側からすれば、
「スペースは空いてるし、法定速度内で走ってる」
「だから早く加速して入ってきてくれ」
…そんな感覚で“譲っているつもり”になっていることが多いです。
しかし、相手の視点に立てばそれがプレッシャーに感じる瞬間もあります。
運転に慣れていないドライバーほど、このスピード感についていけず、
余計に焦ってしまうかもしれません。
トラック側に悪気はなく、むしろ流れを乱さないつもり…
それでも、相手にとっては「怖い」と思わせてしまうことがある。
合流は、一瞬で判断をせまられるポイントです。
だからこそ、無意識のクセが出やすい場面だと思います。
車線変更が近い

最近のトラックは、バックカメラやサイドカメラが当たり前になりました。
映像で後方や側方を確認できるのは本当にありがたく、安全性も確実に上がっています。
ただ、その一方で「カメラ頼り」になっている危険もあります。
バックカメラで「後ろの車を交わした」と確認した瞬間、
そのまま車線変更して入ってしまう。
運転している側からすれば、ちゃんと確認して問題なく入れている感覚です。
けれど、入られた側の車から見ると
「まだ近い」「急に前に入られた」と感じる距離のことも少なくありません。
ここにも悪気はなく、「入れるから入った」ただそれだけ。
しかし、カメラで“見えている”ことと、
相手が“安心できる距離”はまったくの別物です。
自分自身も目の前に入られたとき、
「ちょっと近いな…」と感じることが多くあります。
便利な装備が増えたことで、判断が早くなりすぎる——
それが盲点なのかもしれません。
バックカメラは安全を助けてくれる道具ですが、
距離感を保証してくれるものではありません。
この「見えている安心」と「実際の距離感のズレ」。
ここにも、慣れと無意識が重なって生まれる
“今のトラックならではの危険運転”があるように思います。
ギリギリを通過してしまう

大型トラックを運転していると、正直なところ、どこを走ってもギリギリです。
狭い道、交差点、工場構内、路肩の少ない道路——
どこにも余裕はほとんどありません。
最初の頃は「ギリギリで怖いな」と感じていたはずが、
いつの間にか何も感じなくなる。
それが“慣れ”です。
慣れてくると、ミラーや車幅の感覚が身について、
わざわざスピードを落とさなくても、そのまま通過できてしまう。
「問題なく通れた」「今日も大丈夫だった」
その積み重ねが、やがて
“スピードを落とさないギリギリ運転”につながります。
無理をしているつもりも、危険を冒している意識もない。
ただ、「これは余裕で通れる」と思っている感覚が、実際はギリギリ。
余裕があるのは“感覚”だけで、車の左右にはほとんど余白がありません。
少しのイレギュラー
歩行者、自転車、対向車のはみ出し、突然開くドア。
その一瞬で、状況は一気に危険に変わります。
慣れは、運転を楽にしてくれる一方で、
「スピードを落とす理由」を見えにくくしてしまう。
トラック運転手にとっての「ギリギリに慣れる」という感覚は、
気づかないうちに、危険と隣り合わせになっているのかもしれません。
暗黙のルールに頼ってしまう

長く運転を続けていると、
いつの間にか自分の中に“暗黙のルール”ができていきます。
「この状況なら、こっちが優先だろう」
「相手は譲るはず」
「普通ならこう動く」
特に毎日同じような道を走っていると、その“当たり前”がどんどん固まっていきます。
たとえば合流の場面でも、
「スペースは開けているんだから、相手が加速して入ってくるだろう」
そう思い込んでしまう。
だからこちらは速度を緩めない。
むしろ「法定速度で走っているだけ」という感覚です。
でもそれは、自分の中の常識であって、
相手も同じ判断をするとは限りません。
運転に不慣れな人、状況を把握しきれていない人にとっては、
こちらの“当たり前”がプレッシャーや恐怖になることもあります。
結果として、「今の動き、少し強引だったかな」と感じることもある。
もちろん悪気はないし、急いでいるわけでもない。
ただ、「こうなるはず」と思っていただけ。
この“思い込み”は、慣れた道・慣れた状況ほど起きやすく、
気づかないうちに危険運転を生む原因にもなります。
事故はスピードだけで起きるものではありません。
「相手も同じように判断するだろう」という思い込みから生まれることもあるのです。
まとめ
今回振り返った行動は、どれも理由があってやっていることです。
「減速したくない」
「流れを乱したくない」
「慣れているから大丈夫」
そんな気持ちは誰にでもあるものだと思います。
そこに悪意はありません。
でも、危険な運転というのは“乱暴だから”起きるのではなく、
慣れや思い込みが重なった“無意識”から生まれることも多いのだと思います。
たまに自分の運転を振り返ってみて
「今のは無意識だったかも」と一度思い返せれば安全運転につながると思います。
その一呼吸が、事故を遠ざける最初の一歩になるはずです。


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