フォークリフトの事故で特に怖いのが、歩行者との接触事故です。
フォークリフトは重くて硬い鉄の塊です。車体そのものが重いうえに、さらに重い荷物を持って走ることもあります。しかも自動車のように、衝突したときの衝撃を吸収することを前提に作られているわけではありません。
もし人がフォークリフトの下敷きになれば、車体と荷物を合わせた大きな重量がかかります。接触するだけでも大きな事故につながる可能性があります。
フォークリフトは小回りが利く反面、後輪操舵なので後部が大きく振れるという特徴もあります。重い荷物を高く上げたり無理な旋回をしたりすれば横転する危険もあります。
では、なぜ危険だと分かっているフォークリフトと人との事故が起きてしまうのでしょうか。長年フォークリフトに乗ってきた私が、現場で感じている原因を書いてみます。
なぜ歩行者との事故が起きるのか

大きな原因のひとつが、フォークリフトと歩行者が同じ作業場で動いていることだと思います。
工場や倉庫では、フォークリフトだけが走っているわけではありません。作業者が歩き、トラックの運転手が荷物を確認し、別の作業をしている人が横切ることもあります。つまり、フォークリフトと人の動線がどうしても重なりやすい。そこへフォークリフト特有の死角が加わります。
そしてもうひとつ怖いのが「だろう」です。
歩行者側は「自分が見えているだろう」「近づけば止まってくれるだろう」と思う。一方フォークリフト側も「まさかここには人はいないだろう」「近づいてこないだろう」と思ってしまう。
お互いの「だろう」が重なった瞬間に、事故が起きる可能性があります。
「前が見えている」と思っている時ほど怖いマストの死角

私が実際にフォークリフトを運転していてヒヤッとするのは、大きな荷物を持っている時ではありません。何も持っていない時や、高さの低い荷物を持って前進している時です。
前方はよく見えているので普通に走っているのですが、突然、近くに人が現れたように感じることがあります。もちろんその人が飛び出してきたわけではなく、最初からそこにいたのです。フォークリフトのマストと歩行者がちょうど重なり、こちらから全く見えていなかった。
フォークリフトの前方にはマストやシリンダー・チェーンなどがあります。普段はそれほど大きな死角には感じませんが、人ひとりがちょうどその位置に重なると、本当に見えないことがあります。そして少し走ってマストの陰から人が出てきた瞬間「うわっ、人いたのか!」となります。
大きな荷物を持っていれば「前が見えないから気をつけよう」という意識になります。しかし何も持っていない時は油断しやすい。歩行者側からすればフォークリフトの運転者が見えているので「自分のことも見えているだろう」と思うかもしれませんが、実際にはマストの陰に入っていて運転者からは全く見えていないことがあります。
だから私は、フォークリフトで前進する時は頭・身体を左右に振りながら視界を確保して走行するよう心がけています。
運転者側の原因

フォークリフトを運転する側にも原因があります。一番単純なのは、周囲をよく見ていないことです。
作業に慣れてくると「いつも誰も来ないから大丈夫」「このくらいなら大丈夫」といった油断が出ることがあります。しかし作業場では、人が予想外の動きをすることがあります。荷物の陰から突然出てくるかもしれません。後ろから近づいているかもしれません。こちらがバックを始めた瞬間に進行方向へ入ってくる可能性もあります。
人が近くにいるのに速度を落とさない、安全確認をしない、無理に作業を続ける――こうした行動の根っこにも「まさか事故にはならないだろう」という気持ちがあるのではないでしょうか。
フォークリフトは小さいので忘れがちですが、事故になれば大きな被害を出す可能性がある乗り物です。
歩行者側の原因

歩行者側にも知っておいてほしいことがあります。
一般道路では「歩行者優先」という意識があります。もちろん作業場でも歩行者の安全を守ることは大前提です。ただ「フォークリフトから自分が見えている」とは限りません。ここが非常に重要です。
歩行者からフォークリフトがはっきり見えていると「向こうからも自分が見えている」と思ってしまいがちです。しかし実際には、マストや荷物などによって運転者から歩行者が見えていないことがあります。運転者が別方向を確認している瞬間もあります。
特にフォークリフトに乗ったことがない人は、どこに死角があるのか分かりません。そのため不意にフォークリフトへ近づいたり、すぐ横を通ったりすることがあります。
「自分からフォークが見える=フォークからも自分が見えている」ではありません。これはフォークリフトが動く現場で働く人全員に知っておいてほしいことです。
現場環境の問題

運転者と歩行者だけに原因を求めても、事故はなかなか減らないと思います。現場そのものに問題がある場合もあります。
- 作業場が狭い
- フォークリフトと歩行者の動線が重なっている
- 通路が明確に分けられていない
- 荷物が置かれていて見通しが悪い
- 安全ルールが曖昧、またはあっても守られていない
こうした現場では、運転者一人が気をつけるだけでは限界があります。
特に怖いのが、長年事故が起きていないことで「今まで大丈夫だったから大丈夫」という雰囲気になってしまうことです。ルールはある。でも実際にはみんな「なあなあ」。危ない行動を見ても誰も注意しない。そんな状態が続けば、いつ事故が起きても不思議ではありません。
フォークリフトと人が同じ場所で働く以上、個人の注意だけでなく、人とフォークリフトをできるだけ近づけない環境づくりも重要だと思います。
安全装置(センサー・カメラ)で防げること
最近はフォークリフトにも、さまざまな安全装置があります。
フォークリフトの周囲や進行方向を床面にLEDで照らして「ここにフォークリフトが来ます」と歩行者に知らせる装置、人を検知するセンサーやカメラ・警報装置、フォークリフトが動くと音が鳴る装置など、選択肢も増えてきました。
こうした装置だけですべての事故を防げるわけではありません。最後は運転者と歩行者の安全確認が必要です。それでも死角の多いフォークリフトだからこそ、機械で補える部分は積極的に補ってほしいと思います。
個人的には……ドラレコで事故の原因を確認することも大切ですが、その前に事故を防ぐ装置をもっと付けてほしいです😆事故が起きた後の映像より、事故そのものを防いでくれる方がありがたいですからね。
まとめ|「お互い見えている」と思わないことが大切
フォークリフトと歩行者の事故は、ひとつの原因だけで起きるものではありません。
運転者の油断、歩行者の思い込み、フォークリフト特有の死角、人とフォークリフトが混在する作業環境、安全管理やルールの問題――いくつもの小さな危険が重なった結果、大きな事故につながります。
私が特に怖いと思うのは「相手も分かっているだろう」という思い込みです。
運転者は「歩行者は近づいてこないだろう」と思わない。歩行者も「運転者から自分が見えているだろう」と思わない。
フォークリフトは便利な機械ですが、一歩間違えれば人を大きな事故に巻き込むだけの重量と力があります。「見えているだろう」「止まってくれるだろう」ではなく、お互いに見えていないかもしれない。そのくらい慎重でちょうどいいのではないでしょうか。


コメント